「パロマ判決」に学ぶ、組織と顧客の新たな関係
タイガーマスク現象の裏側パロマ事件と判決の概要
2005年東京都港区で起きた「パロマ工業ガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故により2名死傷」の事故に対し、企業トップが業務上過失致死傷罪に問われた裁判において、2010年5月11日に東京地裁は有罪判決を言い渡しました。
今回の事件の原因は、製品自体の欠陥ではなく、修理施工業者らによる不正改造に起因するものでした。
パロマ側は、道義上の責任は認めたうえで「製品自体に欠陥はなく、不正改造が原因であり、メーカーとしての法的な責任はない」と反論していました。
この発言は消費者の反感をかい、パロマに対する風当たりは強くなりました。
ただし、パロマ側の品質管理の不備や、法的不正があったわけでもないため、このようなケースで、司法がメーカーにどこまでの責任を求めるのか、経営トップにまで責任が及ぶのかが、注目された裁判でした。
判決で重要視されたのは、1985年から2001年までの間に、自社製品の改造による中毒事故で14人が死亡した事実を、パロマが認識していた点でした。
それを踏まえ「不正改造された湯沸かし器の危険性を認識し、死傷事故の発生を予見できた」と判断し、「漫然と放置した過失がある」と結論づけたのです。
組織はどこまで責任を持つべきか
今回の判決は、組織は顧客に対し、今後どのような姿勢で製品・サービスを提供していくかを見直すきっかけになると思います。
かつて、メーカーは「造る立場、売る立場」において製造販売を行ってきました。
しかし、これからは「買う立場、使う立場」に立ち、製品の欠陥が原因で消費者に怪我をさせた場合などの「製造物責任」だけでなく、利用者、使用者の扱い方に伴う事故要因についても安全性に対する責任があると見なされるようになると考えられます。
今回の事件では、パロマ側が10件以上もの死亡事故という事実を把握していながら、修理業者で横行していた不正改造を見逃したという点が問われました。
組織は製品を提供した後、組織側の意図とは違う使われ方をされる可能性について充分検討する必要があります。
さらに、実際に何らかの事故などを発生させていた場に、その事実を把握する仕組みに加え、検討し改善する仕組みをまでが求められます。
品質管理は新たな局面へ
従来、ここまで組織が関与していくことは、CSR(企業の社会的責任)の範囲内、すなわち組織の「モラル」にゆだねる部分がありました。
しかし、製品・サービスがどのような使われ方をされるのかを考えることまでが本来の品質管理といえます。
これは、「品質マネジメント8原則」における「顧客満足」の部分です。
直接の顧客ではなく、その製品・サービスに関わるすべての人を顧客として捉えたうえで製品を製造、販売していくことが、真の「顧客満足」です。
今回の判決により、組織と供給者、組織と消費者との関係は、新たな段階に入ったといえます。
今後、顧客(エンドユーザー)に正常な製品を提供するために、組織が取り組むべきことは、自社の各プロセスが適切に機能しているかを管理できているかということを見直すことでしょう。
買う人の立場、使う人の立場を考えたうえで、組織と供給者がWIN-WINの関係を意識しながら、自分達が何ができるかを考えるようにしていくことが今後ますます求められるようになると思います。
このページの内容は、ISOコンサルタント 三村聡(有限会社アイムス代表)が執筆しているメールマガジン「マネジメントのマメ知識〜ISOを活用しよう」で取り上げたコラムを再編し掲載しています。(2010.3.15 「パロマ判決」に学ぶ 組織と顧客の新たな関係)より
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