震災の観点からマネジメントシステムを考える
この度の震災は、日本全国に甚大な影響を与えるものとなりました。
震災に関して、みなさん様々なことをお考えになったと思いますが、私はISOコンサルタントの立場から、3つのことに気付きました。
それについてお話しします。
1.事業継続計画
震災後、自動車を初めとした多くの産業界で、サプライチェーンが止まってしまうという状況が発生しました。
これは、事業継続プランの不備が露呈した結果だと思います。
すでにほとんどの企業では、事業継続のプランを持っていると思います。
何か問題が発生したら、誰に任せるか、どのように設備を復旧させるのか、このようなリスク対応計画は備えているでしょう。
本来、事業継続計画の対象となる事態には、4つのパターンがあるとされています。
1.サプライチェーンの供給の遮断
2.地震
3.テロ、戦争
4.情報インフラ(サーバー)の遮断
2、3、4に関しては何らかの対策を考えていても、1についてはどうでしょうか。
今回の震災で自動車の部品製造会社が被害を受けたことから、自動車産業全体に大きな影響を与えました。
これは、自動車産業の部品供給の仕組みが「樽型」となっていたからだとされています。
自動車メーカーでは、同じ部品を複数の部品メーカーから調達し、リスク分散を図っていたつもりでしたが、自動車メーカーが把握していたのは、2次部品メーカー止まりでした。
3次以降の調達先をたどると、結局は一社に集中していたのです。
せっかく作っていた「事業継続計画」は、会社の目の届く範囲までしか含んでいませんでした。
直接企業と関わりのある顧客や供給先だけではなく、その先の先までマネジメントシステムの範囲として考ること、これは、ISOの「品質マネジメント8原則」「1.顧客重視」、「8.供給者との互恵関係」の中で提唱されています。
実際にすべてを管理することは難しくても、サプライチェーンを考えた「ビジネスインパクト分析」を行うことは大切なのではないでしょうか。
これを機に、自社がサプライチェーンの中でどこに位置しているのか、「立ち位置」を考えることが大切だと思います。
2.リスク管理
今なお解決していない原発問題。
事故後、担当者の口からは「想定外」という言葉が何度も飛び出しました。
これは、日本におけるシステム作りの「欠点」だと思います。
日本では、失敗0を目指すことから、「問題(不適合)は起きない」という前提で考えます。
不適合があったらどうするか、どのようなトラブルが起こりうるか、起こった場合はどのように対処するかといった、トラブルを前提として考えていません。
今回の事故でも、事故が起きることを前提とした対策をとっていたら、ロボット開発や、避難訓練等の対応ができていたかもしれません。
しかし、もし避難訓練などを行うと、「事故は起こる可能性があるのか」という話になり、「そういう危険なものは設置するな」という風潮になってしまいます。
こうして「神話」でしかない「安全」が生まれてしまうのです。
このため、「想定内のこと」「起こりうること」=「Incident」の範囲が狭くなり、「想定外のこと」「起きないこと」=「Accident」が大量に存在することになります。
「失敗は起こらない」「不適合は悪だ」とするのではなく、大事なのは不適合を見つけること、そしてそれにどのように対処するかを考えておくこと。
ISOシステムを構築、運用する際にもする際にも、肝に銘じておきたいことです。
3.省エネ、節電
エネルギー問題も、今後日本社会を変えていく大きな問題だと思います。
この夏は電力不足が確実になっていることから、「省エネ」「節電」の意識は否応なしに高まっているでしょう。
クールビズ対策や、なるべく電気を使わない、といった省エネ対策があちこちで提示されています。
しかし、企業として省エネを考えるとき、真っ先に考えるべきなのは「電気を消そう」ではなく、「そもそもその作業は必要か」という業務面です。
作業の仕組みを根底から見直すと、電気以上のムダが発見されるかもしれません。
環境対策を考える際も、紙、ゴミ、電気を削減するだけでなく、業務の中の「ムダ」をなくすことが省エネになります。
ISOは本来、単に「規格」に合わせたシステムをつくるのではなく、会社を取り巻く様々なトラブルに対処できるよう、会社全体のマネジメントシステムを構築するものです。
震災を機に、自社のISOが上記の問題にどのように対応しているか見直してもいいかもしれません。
このページの内容は、ISOコンサルタント 三村聡(有限会社アイムス代表)が執筆しているメールマガジン「マネジメントのマメ知識〜ISOを活用しよう」で取り上げたコラムを再編し掲載しています。(2011.6.10 震災の観点からマネジメントシステムを考える)より
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