本ページでは、ISOコンサルタントの三村聡が、コンサルタントの仕事や、仕事への姿勢について語っています。

コンサルタントとは

私はコンサルタントです。
コンサルタントという仕事は分かりにくいかもしれませんが、簡単に言えば、「○○(何らか)」についての相談、助言を行うこと。「コンサルタント」の前に何らか(○○)の言葉をつければコンサルタントは完成です。

私の場合は会社や団体などの「組織」に対してコンサルティングを行っています。ざっくりと「経営コンサルタント」にカテゴライズされると思います。

この「経営」という言葉も非常に曖昧ですが、経営とは会社が何かをすることという解釈でよいでしょう。「何か」とは、例えば「新規店舗を出す」「利益を上げる」「社員を雇う」などがあります。
あるいは最近の流れとして「何かをしない」ことも経営の一つとされています。「食中毒を出さない」「機密を漏えいしない」「不良品を作らない」などです。
要するに経営とは「会社が目指すこと(目指さないこと)」です。

経営コンサルタントというと、主に「コストカット」「リストラ」といったことについてコンサルティングを行うイメージですが、私は直接的にそのような業務を行っているわけではありません。
主な仕事は、組織に対し、ISOをはじめとするマネジメントシステムなどの構築支援を行うことです。

それでは、ISOコンサルタントとは具体的に何をする仕事なのか。

実は、ここからがややこしい話になるのですが、恐らく「ISOコンサルタント」を名乗る人に尋ねても、その答えは千差万別なのではないかと思います。コンサルタントの間でも様々な解釈がなされているのですから、一般の方々にISOコンサルタントとはどんな仕事なのか、わかりにくいのも当然です。

そこで、ISOコンサルタントに興味のある方、やってみたいと思っている方のために、ISOコンサルタントという仕事についてお伝えしていきたいと思います。

コンサルタントの仕事

認証取得代行を行う

ISOとは簡単に説明すると、ISO規格に沿って組織内にISOシステムを構築し、ちゃんとシステムが構築されているかどうか「審査」を受け、審査機関から「認証書」をもらう「だけ」の仕組みです。
システムの構築の仕方についての話はここではしませんが、コンサルタントはそのシステムを構築する(認証書を取得する)ための指導を行います。

ISOコンサルタントを名乗る人であれば、審査に通る程度のシステムを構築することはできます。このため、ISOコンサルタントは経営のコンサルティングというより、むしろ書類作成業務を主とする行政書士などの方が、業務内容としては近いとされることもあります。

コンサルティングの「成果品」の一つは「認証書(認証マーク)」でしょう。これは間違いではありません。ISO取得を目指す組織は、認証書を求めてコンサルタントの支援を受けるという面が大きいからです。
そして、組織側が「認証マーク」のみを目標とするのであれば、互いの利害も一致し、十分にISOコンサルタントとして仕事ができます。

しかしこれは、ISOコンサルティングというよりも「ISO認証取得代行業」と言えます。

知識を伝える

ISOコンサルタントの実際の業務の一つは、ISOマネジメントシステムについて教え、組織がISOシステムを構築できるようにすることです。

しかし、それだけをコンサルタントの仕事と捉えるとすれば、中学生でもできる仕事だといえます。一つの規格につきISO規格の文字数は9000-16000文字くらいですので、暗記力やそれを理解できる能力だけが重視されるなら誰でもできます。

ISOを深く読み込むための「解釈力」は、もちろん重要ですが、それだけでは実際の現場には通用しません。
「ISOにこう書いてある。ISOが全て正しい。だからISO規格が要求する通りにしなさい」
確かにそれは理想です。

けれど、必ずしもその通りにできない状況も存在します。
その場合、無理にそのハードルの高い要求をこなすか、書類だけ適当に書いて現状とかけ離れたシステムを作ってしまうか……そうやってやり過ごすケースもありますが、それでは組織がISOを活用できなくなってしまいます。

ISOの解釈とは文面を理解することではなく、そのニュアンスをできる限り組織に落とし込んでいくことです。
ISOを信じるのではなく、組織の持っている力を信じてそれを引き出すことが大切です。
それができなければ「コンサルタント」としての役割を果たせたことにはならないでしょう。

顧客目線とコンサルタント目線を理解する

コンサルタントになる人の中には、元々何らかの組織に所属し、品質管理課などでISOの事務局を経験し、退職後、自分が長年培ってきた経験や知識を「教える」場としてコンサルタントの道を選ぶ人が多く見られます。

経験や知識は、コンサルティングを行う上で何らかの役には立ちますが、それそのものがコンサルタントとしてのスキルに直結するわけではありません。むしろ、一つの企業に長くいすぎたことで、その企業でのルールが社会のルールであると勘違いしてしまうことがあります。

例えば、10人くらいの建設会社にとって、数千人もの従業員を抱える大企業と同等のシステムを有するのは不可能です。世界的な飲料メーカーで培った経験は、一地方のジュース製造業には通用しません。中小企業のやり方と、複雑な部署に分かれて業務を行なっている企業では、同等のシステムを作ることは難しいはずです。
また、顧客が業務で取り扱っている製品やサービスについての知識は、顧客の方が上でしょう。

コンサルタントのスキルとは、過去の業務やポジションの経験、知識といった局所的なものではありません
自分の業務経験や知識は一旦捨て、支援先の組織に「コンサルタントとして」素直に向き合うことが必要になります。